第41回日本脳神経外科コングレス総会
会長 吉本 幸司
(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科脳神経外科学 教授)
第41回脳神経外科コングレス総会を2021年5月13日から16日までパシフィコ横浜で開催させていただきます。日本脳神経外科コングレス(JCNS)は、脳神経外科医の生涯教育と科学的研究による脳神経外科学の進歩を通して、国民の健康・福祉に貢献することを目的とした学会です。米国の脳神経外科コングレス(CNS)にならって1980年に創設され、毎年1回の学術総会を開催し、すべての演題が指定演題であるなど、一般の学術総会とは違った形で脳神経外科医の生涯教育に関わってきました。
昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、今は社会全体が苦しんでいる状況です。年が明けて、第3波の急激な拡大により、再度の緊急事態宣言が出されました。会員の先生方の中にも新型コロナウイルス感染症患者の対応に従事したり、脳神経外科診療に多大な影響を受けている施設も多いと思います。現時点では先が見えず、収束の見込みがつかない状態ですので、この状況がしばらく続くことが予想されます。この試練の時期ですが、脳神経外科医の生涯教育は継続的に行わなければなりません。今回プログラム委員や指定演者の先生方のご協力により、今年の第41回脳神経外科コングレス総会のプログラムが出来上がりました。開催形式は、会場参加とWeb参加の両方の形式で学会参加ができる形式と致します。今後の状況を見ながら、どの程度の人数が会場参加が可能かについて判断して参ります。しかし状況によっては、完全Web開催になる可能性もあることをご了解いただきたいと思います。
今回の学会のテーマは「グローカル脳神経外科」とさせていただきました。「グローカル」は、グローバルとローカルの混成語で1990年以降使われるようになった言葉です。最近は経済活動や人材育成の文脈で使われることも多く、地理的概念として捉えられやすい言葉ですが、私は「グローカル」を物理・空間的概念として、ローカルとグローバルが相互に影響を及ぼしながら、発展的に問題を解決していく過程だと捉えています。その上で「グローカル脳神経外科」には次の3つの意味を込めました。1つ目は、日本の脳神経外科をローカルと考えた場合、世界の脳神経外科、医療全体、社会全体をグローバルとして捉え、「グローカル」な視点から、日本の脳神経外科医療の現状と将来性を考えてみたいと考えました。日本の脳神経外科医療は、グローバルな視点を持ちつつも、日本の社会環境に合わせて独自に発達した「グローカル」な部分もあると思います。また脳神経外科医は、基本診療科に属する診療科の医師として、第一線で神経疾患の患者を治療することで地域に貢献し、医療全体、社会全体の発展に寄与していると思いますが、今後さらに進歩、発展を遂げるためには「グローカル」な視点での思考と行動が必要になると考えます。2つ目は脳神経外科のsubspecialtyをローカルと捉え、基本診療領域である脳神経外科の全領域をグローバルと認識すると、「グローカル」を実践しすべての領域を理解、俯瞰することによって新たな知恵が生みだされるのではないかと考えています。3つ目は、部分と全体をローカルとグローバルの関係として捉えることです。これから私たち脳神経外科医に求められるのは、部分と全体(ミクロとマクロ)からの視点を往復しながら、更なる進歩、最適解を求め「グローカル」な姿勢で全人的医療を目指す必要があると考えます。
今回総会は例年通り4 日の日程で開催致します。初日の13日には午後から専攻医を対象とした11演題の教育セミナーと専門医取得後の中堅以上を対象とした手術ビデオセミナーを12演題予定しています。14日からは12のプレナリーセッションと第35回日本微小脳神経外科解剖研究会(長谷川光広会長)との合同セッションを行います。その他学会主催でのモーニングセミナーを11企画しており、同じ疾患に対して異なったアプローチからの演題を組み合わせたセミナーも予定しています。ランチョンセミナーでは学会主催の2つのセミナーを含めて計33のセミナーを予定しています。今回の学会では企業共催のセミナー以外のすべての講演を後日オンデマンド配信する予定ですので、生涯学習に役立ていただきたいと思います。
アメリカ脳神経外科コングレス(CNS)との連携を継続し、CNS会長講演や、CNSとのジョイントセミナーも企画しております。特別講演では、第5回の本学術総会の会長である植村研一先生に「脳神経外科医に必要な「うまい英語」の習得」と題して、特別講演を行っていただきます。ぜひご期待ください。文化講演は、慶應義塾大学SFC環境情報学部教授兼ヤフーCSOの安宅和人さんにお願いたしました。With コロナの時代に、残すに値する未来は何か、についてご講演いただく予定です。
コロナ禍の中で、どのような形式で開催できるか未確定な部分は多いですが、会員の先生方に実り多いプログラムになっていると思います。日常診療でもお忙しいと思いますが、現地参加またはWeb参加でのご参加をよろしくお願い致します。